※この記事はネタバレを含みます。
最近、世界的な長編SF小説『三体』を読んでいます。
中国SFらしいスケールの大きさで、宇宙文明、人類滅亡の危機、数百年単位の歴史、そして冷凍冬眠、……と、とにかく設定が壮大です。
読んでいるだけで脳のキャパシティが狂いそうになります。
なのに、私が妙に執着してしまったのは、話の本筋とは1ミリも関係ない「お金」の話でした。
主人公の一人である天文学者で宇宙社会学者のルオ・ジーは、冷凍冬眠によって200年後の未来へ行きます。
彼は人類の命運を握る「面壁者」という超VIPなので、未来での生活費は当然、国家や組織が保証してくれているわけです。
読者もそこは「まあ、そうだろうな」とスルーする場面だと思います。
ところが、作中でわざわざこんな説明が入るのです。
「その間、組織がうまく彼の資産を運用してくれていた」
そこ、律儀に説明するんだ、と少し笑ってしまいました。
宇宙人が攻めてくるかもしれない未曾有の危機の中で、裏ではせっせと資産運用。
しかも期間は200年です。
もはや長期投資というレベルではなく「文明投資」ですよね。
普通の小説なら「重要人物だから口座は永久フリーです」で済ませそうなところを、『三体』は妙に制度的というか、現実的というか、生々しい「運用の裏側」を描いてきます。
ですが、そこに独特のリアリティがあるのです。
さらに面白い(そして恐ろしい)のは、この200年の間に、人類が食糧不足や戦争による人口激減(=大峡谷時代)を経験している点です。
文明が崩壊しかけ、人類が今日生きるか死ぬかという極限状態を経ています。
普通なら、個人の所有権や資本市場、長期投資なんて概念は真っ先に吹き飛ぶはずです。
それなのに、人類は生き延びるやいなや、また経済を再建し、資産を増やし、未来の不動産価格を気にし始めます。
結局、人類はどれだけテクノロジーが進化しようが、宇宙へ行こうが、冷凍冬眠しようが、「資本主義」というシステムからは絶対に逃げられないのかもしれない、と感じました。
技術や文化は変わっても、投資、所有、市場、資産形成という社会の基盤は、案外変わらないのです。
そう考えると、私たちが普段やっているインデックス投資というのは、単なる財テクではありません。
「人類文明は、どんな危機を迎えようとも長期的には成長し続ける」という、一種の狂信に近い信仰なのだなと、ルオ・ジーの爆益口座エピソードで思わされました。
アメリカの発展を信じている筆者は、新NISAでS&P500を購入していますが、『三体』を読んでいると、200年投資するならさすがにオルカンなのでは、という気持ちになります。
何しろルオ・ジー先輩は、文明崩壊の危機をまたいで「200年ガチホ」していたのですから。
「未来だから生活はタダ」で済ませるところを、わざわざ「裏で資産運用されていた」と制度的なリアルを描くのが『三体』の面白いところです。
📙三体(劉慈欣 著)
SFとしての壮大さはもちろんですが、ディストピアになってもなお回り続ける「資本主義のしぶとさ」をこれでもかと見せつけられます。ある意味、どんな投資本よりも「長期投資の覚悟」が決まる一冊です。
「宇宙人の襲来」と「200年間の複利パワー」、勝つのはどちらか。あなたの目で確かめてみてください。

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