著者のデータ捏造問題で揺れる『予想どおりに不合理』。今、この本をあえて読む価値はあるのか?

ミニマリストおばさんの心が軽くなる本棚

予想どおりに不合理』ってどんな本?

本書『予想どおりに不合理』は、行動経済学者ダン・アリエリーが、ユニークな実験を通して「人間の意思決定の不合理さ」を解き明かしたベストセラーです。

従来の経済学では、「人間は自分の利益や欲求に応じて、合理的な判断を下す」と考えられてきました。しかし、現実の私たちは違います。

  • 「無料」という言葉を見ただけで、大して欲しくもないものに惹かれてしまう。
  • 最初に提示された「アンカー(基準価格)」に、その後の判断を引っ張られる。
  • 同じクオリティのものでも、雰囲気がいい方を高く評価してしまう。

本書の最も面白いところは、これらの不合理な行動が「たまたま」起きるのではない、という点にあります。人間は同じような状況に置かれると、予想どおりに同じような行動を繰り返してしまう。そんな人間の不合理さを明らかにしていくのが本書の面白さです。

読む前に知っておきたい「データ不正問題」

とても興味深い本なのですが、実は読む前に知っておくべき事実があります。のちに、著者が関わった別の研究で、データ捏造が発覚しました。(※本書のデータそのものが捏造と判明したわけではありません)。

「じゃあ、この本に書かれていることは全部嘘なのか?」と全否定してしまうのは、少しもったいないと感じます。逆に、高名な学者の本だからと100%盲信するのもまさに「不合理」です。

大切なのは、書かれている実験結果や結論をそのまま受け入れるのではなく、この本の示した人間の本質を「自分ならどうか?」と生活の中に引き寄せて確かめてみることではないでしょうか。

身に覚えがありすぎる「納得のエピソード」

実際、本書が暴く「人間の判断の脆さ」には、納得感がありました。

著者は、実験を通して人間は「雰囲気が高級なら味も高級に感じる」と言いますが、これは本当にその通りです。安いワインでもRIEDEL(リーデル)のグラスで飲むとおいしく感じますし、シンプルな料理でもル・クルーゼの鍋で作ると特別に思えてしまいます。毎日使う食器や調理器具にお金をかけるのは非常にコスパがいいと常々考えていたのですが、本書を読んで、ますますその考えに自信を持ちました。

さらに、「現金から距離ができると不正への抵抗が弱くなる」という指摘にも、思い当たる節がありました。 会社の現金を盗もうとは誰も思いませんが、「オフィスの付箋を1枚拝借して私用の買い物メモを書く」といったことなら、身に覚えのある人も多いのではないでしょうか。「付箋1枚くらい」と、無意識に言い訳を作ってしまう人間の心理は、驚くほど身近な日常に潜んでいます。

こうした無意識の癖を知っておくだけでも、生活に潤いを与えたり、一方でリスクを減らす策にもなります。

読んでいて腑に落ちなかったこと

一方で、著者が主張する「人間は自分の欲しいものを正確には理解していない」という話には、若干の疑問が残ります。

人間の不合理性を裏付けるエピソードとして、著者自身の車選びの話が紹介されます。ディーラーのサイトで安全性や広さなどの条件を入力していったところ、おすすめされたのは「ファミリー用のバン」。しかし、本当に欲しかったのは「スポーツカー」だったという話です。

しかし、これは「人間は自分の欲しいものを正確に理解していない」という話ではないと思いました。

スポーツカーが欲しい。でも、安全性や室内の広さ、快適性を考えれば、ミニバンの方が小さい子どもがいる自分の生活には合っている。

それは自分の好みを理解していないのではなく、「欲しいもの」と「必要なもの」が違うだけではないでしょうか。

まとめ:本に正解を求めず、自分の日常で答え合わせをする

だからこそ、この本は面白いのだと思います。納得できる話は自分の行動を見直す材料にすればいい。腑に落ちない話は、疑問のまま残しておけばいい。

人間は予想どおりに不合理なのか。その答えを本から一方的に受け取るのではなく、「自分ならどうだろう」と考えてみる。

本を閉じたあとも、自分の買い物や選択を観察しながら答え合わせをしていく。私には、そのくらいの距離感で読むのがちょうどいい本でした。

👉予想どおりに不合理(ダン・アリエリー著)
長い本なので、目次を眺めて、自分の暮らしに関係のありそうなところだけ読むのが、おすすめです。日常の「無駄な買い物」や「心の油断」を防ぐお守りとして、手元に置いておいて損はない一冊です。
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