※この記事は『火星の人』のネタバレを含みます。
このゴールデンウィーク、私は火星にいました。
といっても、アンディ・ウィアーの『火星の人』をイッキ読みしていただけですが。
主人公は、事故で火星に一人取り残されたNASAの宇宙飛行士、マーク・ワトニー。普通の人ならパニックで即ゲームオーバー、絶望して砂を噛んで死ぬような状況です。しかし、彼は知性とユーモアを武器に、次々と起こるトラブルを(なんなら少し楽しそうに)解決していきます。
「NASAのエリートなんて別世界の人の話でしょ」と切り捨てるのは簡単ですが、彼が示す行動指針は、ただ生きるだけでHPを削られる現代社会のサバイバル術として、驚くほど実用的です。
「消耗しない暮らし」を追求する私たちが、火星の孤独な男から盗むべき5つの鉄則を抽出しました。
自分を客観視して「面白がる」
物語は彼の日記形式で進みますが、視点は驚くほど客観的です。最悪のトラブルに直面しても、「今日はこんな失敗をした(笑)」といった調子で状況を観察しています。
それから、絶望的な状況でも「なぜ自分だけがこんな目に……」と神に祈ったり自分を呪ったりする時間を最小限にします。感情にエネルギーを割いても、事態は好転しないと知っているからです。
何か問題が起きた時に、「どうしよう」とオロオロする前に、第三者の目線で観察し、感情の波に飲み込まれないようにする。問題をタスク化して、一つずつ潰していく。感情に使うエネルギーを減らすことも、消耗しないための方法なのかもしれません。
「あるもの」だけで最適解を出す
「火星には捨てるものなんて何一つない」とワトニーは言います。ダクトテープで居住区を補修し、仲間の排泄物を肥料にしてジャガイモを育てる。「足りないもの」を嘆く暇があるなら、手元にある資源(ストック)の使い道を考え抜きます。
新しいツールを買い足す前に、今あるものでどうにかできないか考える。モノが足りないと考えるより、今持っているものをどう使うか考える方が、お金も場所も使いません。
休息を「戦術」として取り入れる
彼は「根性で徹夜」なんて無意味なことはしません。重労働の後のリカバリーや、重要な決断前の睡眠には徹底的にこだわります。腰痛になれば作業を止めて横になる。
それが、トータルでの生存率を上げる最短ルートだと理解しているからです。
睡眠や環境に投資するのは、翌日の「生存戦略」の精度を上げるための必要経費。メンテナンスを怠って機材(体)を壊すのは、単なる計算ミスです。休息を削って体を壊せば、結局は使える時間まで減ってしまいます。
余談:結局、最強のサバイバルは「一人」であること?
ところで、ワトニーが生き延びられたのは「一人だったから」ではないでしょうか。
もちろん、NASAの協力がなければ生還できませんでした。でも、火星で次々と起こるトラブルに対処するのはワトニーです。
ワトニーは考え、決め、行動する。NASAの指示を無視することさえある。
常に誰かと相談し、合意を取り、忖度する必要がない。実際、ワトニーとNASAとの通信が復活すると、地上では駆け引きや政治が始まりますが、火星にいるワトニーは巻き込まれずに済む。使える時間も思考力も、自分が生き延びるために使えます。
孤独そのものが強いのではなく、助けを求められるつながりを持ちながら、自分で決められる距離があること。それがワトニーの強さだったのではないかと考えます。
同じ著者の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』でも、ある意味ワトニーと同じく絶望的な状況で問題を一つずつ科学的に解決していく主人公が描かれます。『火星の人』が面白かった人には、こちらもおすすめです。

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